「日経トップリーダー」1月号 ~経営プロフェッショナル~より
感想文: 木村加代子
創業家と縁もゆかりもない、元社員でもない、ちょっと変わった経営者として東京大田区大森にあるダイシン百貨店の西山社長が紹介されていたのですが、丁度今週テレビ東京のカンブリア宮殿でも紹介され、映像で見ることで、大きな衝撃を受けたので感想にしてみます。
1964年に開店したダイシン百貨店は高度成長期には約350億円の年商だったが2009年1月期では80億円の規模。しかし、純利益率は約2%とセブン&アイ・ホールディングス(約1.6%2009年2月期)を上回ります。
最大の武器は「半径500m以内。シェア100%主義」をキャッチフレーズとする地元密着戦略です。それが徹底していて、たとえペットボトル1本でも、お弁当1個でも、その日のうちに社員が届けます。陳列商品アイテムの数の多さ、年に数点しか売れなくても仕入れの時、お客様の顔が浮かぶ商品は切らさない、と言います。高齢者のお客が過半数なので、昔から使われている洗剤、化粧品、日用品、全国のお味噌、など、よそに置かれなくなった商品もダイシンに来たら何でもある、という状態にしてあり、そのため顧客の信頼も厚く、ダイシンが好きだから毎日来る、という顧客もたくさんいます。顧客は店員と毎日言葉を交わしたり、一種のコミュニティーになっているのです。
しかし、西山社長が外部から取締役になった04年の時点で借入金は100億円以上に膨れ上がっていました。長年の粉飾と設備投資、多額の借り入れの繰返しの結果です。
そこで西山社長は既存姉妹店を全て閉鎖したうえで資産の売却、本館レストランの廃止など、負の遺産の整理をすすめ、高齢社会を見据えて社会的弱者に軸足を置いた、大手チェーンストアでは出来ない小回りのきく経営を心がけ、高齢者向け健康支援サービスや、他では扱わない旧製品などの仕入れの継続など、堅実にリピーターを獲得する戦略をとっていったのです。婦人用の洋服の仕入れひとつ見ても1点ずつしか仕入れない、同じものは2枚ない、つまり、近所のお客様なので、同じ服を着た人と会ったら嫌だろう、というお客様目線で仕入れ、形が同じでも色や柄を全て違う商品を仕入れるという気遣いぶりです。駅から10分、駅のまわりには大型チェーン店がひしめく中、建物は老朽化し、駐車場も狭いですが、年間来客数は400万人。お店は活気づいています。
まさに、顧客第一主義が徹底されている良い例だと思いました。また、西山社長の経営は大きくなろうとしていない、必要な存在を目指している点、自社の弱みを強みに変えていった点、こつこつまじめに負からプラスに努力工夫し変えていった点、などは、あきらめない、投げ出さないで取り組んでいくことの大切さを実践して見せてくれている気がします。 また、皆が同じ気持ちで取り組んでいることが重要で、うちでも見習うべきことがたくさんあり勉強になりました。
2010.6.30.