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「 不機嫌と甘えの心理 」(加藤諦三) を読んで

 感想文:大阪営業所 高橋裕樹

人間の感情は、あの人が好きとか、あの人が嫌いとか、はっきりしているわけではない。またあそこに行きたいとか、あそこに行きたくないとか、いつもすっきり願望が統合しているとは限らない。むしろ現実の生活においてはいつも好きと嫌いという相反するものが心の中で葛藤している。

好きな人が憎たらしいということもある。行きたい気持ちが半分、行きたくない気持ちが半分、ということもよくある。美しい景色とさわやかな空気の場所を見つけた。別荘を建てたいと思ったら、その野原にはヘビがいるらしいという。別荘を建てたいような気持ちでもあり、建てたくないような気持ちでもある。矛盾した感情が、旅行や別荘建築のようなことではなく、人間関係の中で起きてくる。恋人や、友達や、親などという近い相手に、矛盾した感情が向けられるということがある。

神経症型の人は嫌われたらということが怖くて、言いたいことが言えないうちにだんだんその不満が心の中に募ってくる。その不満を表現することもできず、また別れることもできなくて、不機嫌になったり、相手を嫌いになったりしていく。神経症型の人は嫌われるのが怖いから、相手が怒るとごめんなさいと謝ってしまう。心から謝っているのではない。嫌われるのが怖くて、言葉としてごめんなさいと言っただけである。気持ちが謝っているわけではない。それを繰り返しているうちに、次第に自分の気持ちが理由もなく不機嫌になる。神経症型の人は相手の心を読むことをしないで、ごめんなさいと言って自分の態度を売り込む。しかし、いさかいの原因が取り除かれていないから、同じことが繰り返される。相手に理由も聞かないし、自分の不愉快な気持ちを伝えもしないで、ただ嫌われたくないために、ごめんなさいを言う。次第に相手に素直になれなくなる。次第に相手が好きではなくなる。しかし相手から離れられない。神経症型の人の人間関係の特徴は不機嫌である。好きな人に敬意を持つというような両立しない感情を考える。

人は嫌いな人に敬意を持っても苦悩しない。別れられないほど好きな人に敵意を持った時に苦悩する。

2022.4.28.


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