「生き方」(稲盛和夫著)を読んで
感想文:河合孝一郎
わが社では年末になると社長が「今年はよい一年だったと思う人」、「悪い年だったと思う人」、と問う。そして、「どちらでもなかった」という人には「なにも悪いことが起こらなかったのだから、それはそれでよかったですね」と社員一同に語りかける。それで、「ああ!今年も終わったー」と皆、思うのである。
今年一年、幸せだったと思う人は「自分が元気で過ごしていられること」に感謝する。まるで世界中が自分に微笑みかけているかのような、いきいきとした瞳。不幸だと思う人は例えば「あの土地が安いときに買っておけばよかった」などと悔やむ。悔やんでも仕方がないことを悔やむ。悔やむことにエネルギーを使う。家を持っていても毎日不愉快に過ごしている人もいる。豪華な高級住宅地のなかで家族が険悪な関係で生きていることもある。人間は土地や家を持つことで幸せになれるわけではない。幸せになれるかどうかは土地や家があるかで決まるわけではない。ものの捉え方、考え方で幸せになれる人か不幸になる人かが決まるのである。
稲盛和夫はものの考え方にこだわる経営者である。この本の中で考え方を変えれば180度人生は変わるという。そして能力よりも考え方の方に重きを置いているところが他の経営者と異なる点である。それが「人生の方程式」。人生、仕事の結果=考え方×熱意×能力である。これは昔、人並みの能力しかもたなかった稲盛氏が人並み以上のことをなして、世のためにわずかなりとも役立つためにはどうしたらいいかと考えた末に見出した方程式で稲盛氏の生き方のベースとなっているという。考え方のベクトルが人生すべての方向を決める、とはっきりと言っている。
そして考え方の次に重きを置いているのが熱意である。活動的な人、意欲的な人は決して小さいことを馬鹿にしたりしない。ライオンは小さい獲物をとるのにさえ、全力をつくすというではないか。日常のすべてのことに全力であたることを避けてはならない。
稲盛氏はエネルギーの使い方を計算したりしない。この人の仕事ぶりを見ていると人間のエネルギーは貯金ではない、使ったらなくなるものでなく、使えば使うほど増えるものである、と誰もが発見するだろう。
人間は自分の力によってしか幸福になれない。時計の針は二度と巻き戻すことはできないが、前に進めることはできる。
2013.3.30.